
当院では、認知症予防に効果的とされるオーラルプロケアを充実させることで、患者様がいつまでも健康に過ごせる一助となるように従事しております。
認知症と口の関係
「口」が果たしている役割は大きく、噛む、すりつぶす、食べる、話すことがあります。
昔から、「口」は消化器系の第一歩とされ、口腔環境の健康を保つこが長寿の秘訣とされてきました。
近年の研究では、認知症予防においても口の健康が非常に大切とされ、歯が19本以下の人は、20本以上の人と比較して要介護認定を受ける割合が1.2倍との報告もあり、65歳以上の人は注意を払うべきと言われています。
口腔内細菌は腸内環境にも影響する
「脳腸相関」という言葉を耳にしたことがありますか?
脳と腸はそれぞれ別の臓器ですが、自律神経やホルモン、免疫などの働きを通し、密接に関係し合っており、ボケずに脳の健康を維持していくには、腸内環境を良くする必要があると考えられています。
人生100年時代には、この脳腸相関がとても大切なキーワードです。
ボケたくなければ歯が命
研究によると、奥歯を抜くことで、噛む感覚を脳幹に伝える神経がダメージを受け、脳の一部の神経が死に、認知症の原因物質が拡散・蓄積する。この連鎖が、認知症発症や進行のリスクにつながることが分かりました。 脳内で神経変性が起こり、認知症リスクが高まることが示唆されたのです。
また、65歳以上の人が歯を失うことで、アルツハイマー病を引き起こす要因になるとの研究結果もあります。
脳の健康にとっていかに歯が大切であるかが、科学的に解明されたわけです。
噛むことで脳への刺激に
「口と脳」密接に関係しています。
歯の根と、歯を支えている骨の間にある歯根膜。この組織は、脳幹から出ている三叉神経に直接つながっています。
歯が抜けることで、歯根膜と三叉神経のつながりが断ち切られ、脳幹の神経細胞が死滅し、認知症リスクが高まると考えられています。
これまでは、歯が抜けてもそれは単に口の中だけのことと思われていましたが、実は、脳に悪影響を及ぼしている可能性があるのです。
「腸」と「脳」の間に「口」は位置しており、物理的に上から並んでいるのではなく、脳腸相関がある「脳」と「腸」と、その間にある「口」はそれぞれ影響を与え合っているのです。
よく噛むことで顎の筋肉を鍛え、肉や野菜など固さの異なるものを咀嚼し、嚥下する。
これらの動きは全て脳がコントロールしています。すなわち、噛む行為自体が、脳に良い刺激を与えているのです。
咀嚼は血流増加に
咀嚼によって脳に物理的な振動が伝わり、脳に良い刺激をあたえます。また、咀嚼することで血液の流れが良くなり、必然的に脳への血流も良くなります。
よく噛むこと、咀嚼する行為は、脳の健康の維持・促進に役立ちます。
意識の改革、何十回噛むではなく、『もう10回多く噛もう』
無理に30回噛もうとするのではなく、自然と噛む回数が増える食事にすることを心がけましょう。もう10回多く噛もう、その意識が大切です。
また、メニューにれんこんやゴボウなどの根菜類や切り干し大根のような噛み応えのある食材を取り入れたり、タコやイカなど、弾力がありよく咀嚼する必要がある食材を交ぜる。調理の際には食材を少し大きめに切り、自然と咀嚼回数が増えるようにするなど工夫してみましょう。
工夫もさることながら、しっかり噛める歯があること大切なのは言うまでもありません。
口腔と栄養
歯の丈夫さを保つにはカルシウムの摂取が欠かせないことは周知されていると思います。
実はカルシウム以外にも大切なものにマグネシウムがあります。マグネシウムは魚介やナッツ類、大豆、玄米などに含まれています。
さらに、歯周組織の健康には亜鉛も必要です。亜鉛は、味を感じ取る舌の味蕾(みらい)細胞の新陳代謝にとっても重要な働きをします。亜鉛は牡蠣(かき)や小魚、抹茶などに豊富に含まれています。
歯根膜などの主要な成分であるたんぱく質も十分に摂取すべきです。
肉を食べずに野菜ばかりという、高齢者に見られがちな「粗食」は避けましょう。
味覚力は鍛える脳トレ
脳で「甘味」「塩味」などの五味を感じ、それぞれの味に関わる脳の部位は異なります。味覚のほかに、食事をする時の雰囲気、体調、食経験なども合わさって、その味を「快」と判断し、「おいしい」と感じるのですが、おいしいと感じる脳の部位もまた異なります。
より多くの味を感じ、それをおいしいと思うことは、より多くの脳の部位を刺激し、脳トレになるのです。脳への刺激が増えると、幸せホルモンであるセロトニンの分泌量も増えるため、アンチエイジングにもつながります。「味覚力」を鍛えることは健康を増進させる脳トレと言えます。
オーラルケア
おいしく食事をするには、歯が丈夫であること、それには適切な口腔ケアは欠かせません。ご自身で歯ブラシすること、歯科医院でオーラルプロケアを受けること。この2軸は対輪となるでしょう。
達成感
認知症の予防に達成感が一役買います。
この達成感を当院でサポートしていきます。何事も継続は力なり。一緒に頑張ってまいりましょう。
歯みがきについて
就寝前の歯みがき
就寝時は、口の中を自然と掃除してくれる唾液の分泌量が減るため、口腔内細菌の量が増えます。その量を少しでも抑えるために、寝る前に口の中の細菌を取り除いておく歯みがきは大切です。
起床後すぐ、朝一番の歯みがき
寝ている時にたまった細菌をきれいに洗い落とします。
お風呂の中での歯みがき
唾液には、ネバネバ唾液とサラサラ唾液があり、リラックスして副交感神経が優位になるとサラサラ唾液が分泌されます。このサラサラ唾液は、サラサラとしているため口腔内の細菌を洗い流す効果が高く、お風呂に入っている時はリラックスしているので、サラサラ唾液が分泌されて洗浄効果が高まるはずです。